「HIV感染者」の治療と社会的施策について~その2~

前回(~その1~)まとめたように「HIVという病気の社会的な問題=感染拡大の防止」について、今回は考えてみたいと思います。

感染拡大を防止するためには、感染する確率を下げることが重要になってきます。

もちろん各人がコンドームを付けたり付けてもらうといった「自己防衛」をすることも重要だし、その啓発活動を進めることも大切です。

一方で、HIV感染者の「他人に感染させる確率を下げる」ことも考える必要があります。

HIV(ウイルス)の感染確率については、自分なりに以前「HIVの感染確率」でまとめているように、感染確率だけを考えると、同じ「HIV感染者」であっても他人に感染させる確率は同じではありません。

なんとなくHIV感染者で服薬しているというと、まだ未投薬の人よりも重症で、他人に感染させる可能性も高いのではないかと思いがちですが、そうとも限らないのです。

例えば、あなたがHIV感染者ではない人だとして、目の前に条件が同じだけど、①HIV感染者で投薬中、②HIV感染者で未投薬、③HIV感染者ではない人、という3人がいて、そのうちの1人とセックスするとしたら。。。感染確率を考えると、③>②>①という順番に安心できるというものではないのです。

上記③であっても、未検査で実はHIVに感染している人(状態としては②と同様の人)もいて、見かけ上は判別不可能なので、「自分はHIV感染者ではない」と言っているからといって安心というわけでもないんですよねw

もちろん状態は個々に異なるので、単純にまとめることには問題がありますが、余計な条件はここでは考えないこととします。

当たり前のことですが、体の中のHIVというウイルスの数が多い(=密度が高い)ほど、他人に感染させる可能性が高くなります。

このブログで何度も取り上げているHIV感染の臨床経過(模式図)を見ていただくと一目瞭然ですが、最もウイルス量が多い(=感染確率が高い)のは、感染したばかりの方であることがわかります。

ただし、このグラフは、あくまでも治療をしなかった場合の推移ですので。。。

HIVの治療(ART=HAART)をした場合のグラフについては、九州医療センターのサイト「エイズとはどんな病気でどんな経過をたどるんですか?」も参照して下さい。

このように治療をすることで、「HIVというウイルスの量を抑えられる=他人に感染させる確率を下げられる」のです。

もちろん本ブログでまとめてきたようにHIV(ウイルス)の検査には、特有の「ウィンドウピリオド」という検査をしても正確に判別できない時期(通常の検査では約3ヶ月、高性能で高価な最新検査方法でも約2週間)があるので、完全に感染拡大だけを封じることはできないのは事実ですが。。。

少しでも感染拡大を防止するためには、「感染していないか検査すること」とあわせて「感染の確率を下げること=HIV治療を進めること」が重要と言えます。

一方で、そのための社会保障制度はどうでしょうか?

もちろん制度があるだけマシということもあるのですが。。。

どちらかといえば、感染拡大の防止という観点ではなく、「本人の体の状態=治療」ということに重点をおかれていると感じます。

このことは、日本のHIVに関する社会保障制度が、「薬害エイズ」の患者を念頭において進められ、他の身体障害者と同様の制度として整備されてきたことが一因なのかもしれません。

具体的には、状態が悪化すればするほど手厚い保護が受けられるという点です。

「それは当然でしょ?」と思われるかもしれませんが。。。

HIV感染者(HIVというウイルスの感染がわかったばかり)という立場から見れば。。。「状態がある程度悪化するまで待った方がよい」という判断につながってしまい、結果として感染拡大につながってしまう可能性があるのです。

HIVの治療が始まれば、その治療が失敗しない限りは状態が悪化するとは考えづらく、早く治療を開始することで手厚い保護も受けられない可能性が高い制度になってしまっています。

このことは世界的に、HIV治療は感染が分かれば早い方が良い(本人の体にとって、さらに他人に感染させる可能性を下げることにおいて)と言われているトレンドにも反することになってしまっているのです。

HIV感染だけを特別視することに問題があると考える人も少なくないかもしれないけど。。。

人間の欲の一つと言われる「性(セックス)」と密接な病気であるということ、世界的に感染が拡大していてその対策が急務と言われ続けていること、さらにセックスする世代=働き盛りの生産世代でもあることなどを考え合わせると。。。

あえて特別視してもいいのではないでしょうか?

正直なところ。。。感染拡大防止の対策として、コンドームなどの自己防衛の啓発活動だけでは難しいと思うんですよね^^;

「HIV検査態勢の拡充とその広報活動」、それとあわせてHIV治療を早く開始することを促す「社会的な施策」も必要だと思うし。。。現状ではそれが不十分なのではないでしょうか?

そのことがHIV感染者数や(いきなり)エイズ患者数の増加という結果につながっているように思えてなりません。

このことは、何も新しい制度を作る必要があるのではなく、「実用面の変更=認定基準の見直し」で対処可能だと考えます。

「HIVという病気の社会的な問題=感染拡大の防止」のために何をすべきか。。。考え直す時期はすでに過ぎてしまっているのではないでしょうか?

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