とあるベストセラー作家に思うこと

ネットを眺めていると、少し気になる情報を見かけたので、ちょっと時間をかけて検証してみました。

それは、2008年8月に発行され、2010年6月に、今年何かと話題になった「松たか子」主演で映画化もされた「告白」という作品についてです。

作者は、湊かなえという女性のデビュー作で、最近話題になったテレビドラマ「Nのために」とか「夜行観覧車」「高校入試」など、注目を集めるキャッチコピーと衝撃的なシーンが印象的な売れっ子作家のようですね。

個人的に、(最近は)本もほとんど読まないし、映画もほとんど見ないので、内容は知らなかったけど。。。松たか子の映画CMのような映像は見たことがあったかも。。。という程度の知識しかありませんでしたが。。。

どうやら、「HIV」がキーワードになっている作品のようで。。。

書籍も映画も大ヒットだったらしいので、ご存知の方も多いのかもしれませんね。

まず、ネット情報によると。。。

学生(少年)の犯罪行為(殺人)によって、我が子を殺された女性教師が、(未婚ながら子供の父親でHIV感染者である男の)HIVの血液を「牛乳」に混ぜて飲ませる

といったショッキングなシーンが話題だったとか。。。w

医学的な間違いについては、素人の私がトヤカク言うまでもなく、お医者さんによる指摘があったので、そちらを参照していただければと思います。

「告白」の嘘(ネタばれ注意)[科学検証]~六号通り診療所所長のブログ~

この文章を読むと、なんでこの作者や出版社は間違いを修正しないんだろうと、素朴な憤りを感じたのですが。。。

他の人の情報だけを元に判断するのも、どうかなと思ったので、DVDをレンタルして、図書館で本も借りて、さっきまで集中的に本を読んで、DVDも見させていただきました。

若干、このお医者さんの言うことにも気になる点があったので、自分なりに補足しておこうかなと思います。

まず小説についてですが。。。さっとナナメ読みしただけでは、チンプンカンプンですw

仕方ないので、本腰を入れて分析してみると。。。

全6章で構成され、それぞれ違った人がメインになっているので、さっと読んだだけでは混乱しますw

1章:女性教師の告白(少年AとBについて)
2章:クラス委員長の女子生徒の視点
3章:少年Bの姉の視点(少年Bと母親について)
4章:少年Bの視点
5章:少年Aの視点
6章:クライマックス(女性教師と少年A)

おおまかな構成は、「告白(1章)」+「背景など(2~5章)」+「結論(6章)」といった3つの構成になっています。

HIV直接関係する記述は、1章と6章で触れられて、その医学的な問題点は上記お医者さんが指摘されている通りです。

上記ブログの指摘のうち、気になる点をピックアップしてみると。。。

妊娠の検査を受けるのは、
通常性交渉の1ヶ月半後ですから、
まだその時点では、
HIVの感染の有無は判断は出来ないのです。

いわゆるウィンドウ期のことを指摘されているのですが、あえて作者の立場で反論すると、通常ではない検査であれば1ヶ月半でも結果が出る検査も存在すると言うことは出来るかなと思います。

小説の事例では、
お母さんの感染は否定されているのですから、
妊娠のその後の時期に、
お母さんは何ら不安を持つ必要はありません。
お父さんの持つHIVが、
お子さんに感染することは有り得ないのです。

これは、何も知らない方だと不安に思う点かもしれませんね。先日取り上げた「あなたに伝えたいこと2~HIV陽性告知されたばかりの妊婦の方へ~」の中でも触れましたが、仮にお母さんが感染していても、子供に感染する可能性は(きちんと対処すれば)極めて低いし…。

これを読んだ一般の方が、
これはHIVについての事実だと思っても、
仕方がない書き方をしているのです。
従って、こうした書き方をしている以上、
述べられた内容は基本的には正確であるべきだ、
と僕は思います。

これは、この通りですよね。作家も出版社も、いい加減にしてもらいたいですw

復讐を考えた女性教師は、
自分のかつてのパートナーのHIV感染者の血液を、
「朝こっそり採取」して、
生徒の飲む紙パックの牛乳に混ぜ、
その生徒に飲ませたと生徒の目の前で、
宣告します。
これが犯人への彼女の復讐だと言うのです。

(中略)

要するに、作品を読む限り、
別にHIVが出て来る必然性はないのです。
別の架空の病気でも全然構わないし、
他の毒物を登場させても良い訳です。
HIVを敢えて取り上げるのであれば、
もう少し適切な知識を元に、
無用なHIVへの恐怖感や、
患者さんへの偏見を助長しかねないような表現は、
厳に慎むべきだと思うのですが、
皆さんはどうお考えになりますか。

このお医者さんの文章だけで判断すると、指摘されている通りだなと思って、上で触れているように「なんでこの作者や出版社は間違いを修正しないんだろうと、素朴な憤りを感じた」わけですが。。。

あえて作者の立場で反論すると、この作品で「HIV」を取り上げている意図というのは、100%ではないけど、感染の「可能性」があるという、曖昧さだったりするんですよねw

1章で「HIVの血液を混ぜた牛乳」を少年AとBに飲ませたと告白することで、HIVに感染したかもしれないという恐怖(いわゆる「HIVノイローゼ」)を少年に味あわせることを意識しているため。。。

広く間違った常識が広がっている「HIVじゃないと成り立たない恐怖感」を題材にしているとも言えそうです^^;

まあ、いずれにしても「極めて趣味が悪い文章」であることに変わりはないですがww

それに、そういう意図だとしても「注釈」は必要ですよね。

ちなみに、映画の方は、比較的原作本に忠実に映像化されていて、松たか子演じる女性教師の切迫した演技自体は悪くないと思うけど。。。

子供の父親(HIV感染者)の血液を(寝ている間に)採取というのは、かなり無理がありますよねw

お医者さんも指摘されているように、「精液」の方がまだ「採取」しやすいのかもw

そういえば、ハリウッド映画で、コンドームにたまった精液を、(犯人である奥さんが)殺した女の性器の中に残留させるという映画もありましたよねw

正直なところ、全体を通して(小説も映画も)オススメとは言い難い内容です。

強いて言えば、最近は、こんないい加減な内容でも大ヒットしてしまうくらい、見る側のレベルが低いんだなと再認識させられました^^;;

もうちょっと補足をしておくと、この作者も(もちろん出版社も)映画化した監督も(もちろんスタッフも)、無責任ですよねw

どんな考えで小説を書いたのか、作者が自慢げに語っているインタビューもあるようで。。。(あえてリンクしませんけど)それによると、第1章は「2週間」で書き上げ。。。

読者の受け取り方も本当にさまざまで、フィクションを楽しむという方もいれば、現実にあったことのように受け止めて真剣に考えて下さる方もいて。意見を言ってもらえたり、問題提起をしてもらえたり、本を閉じた後にも心に残るような読み方をしてくださっているのはありがたいなと思います。「一冊の本からこんなにもたくさんのことを感じたり考えたりするんだな」ということを発見しました。本ってすごいなあ、と思います。

なんてことを笑いながら語っているようだけど、「実在のもの(ここで言えばHIVとか)」を題材として取り上げるのなら、(HIVなら近所のお医者さんでもいいので)取材もしくはネットで検索ぐらいすれば?って思います。

素人が人のウワサをもとに空想してみました(でも本当かどうかはネット検索すらしていないので分かりません)テヘペロ(・ω<)

というような小説が、大衆を扇動(間違った常識をさらに定着化)させているという意識が全く欠落しているのは驚きです!

日本人って、単純だから、マスコミ。。。特に「活字」や「映像」になったものは、素直に事実だと思う傾向が強いので、それに携わろうとする関係者には、その意識をしっかり持っていて欲しいものです。

最近、医療を題材にしているドラマなども多い(たぶんアメリカのドラマ等の影響)ようだけど、漫画家の手塚治虫や、推理作家の横溝正史など。。。きちんとした医療や薬剤の知識をもとに、もちろんその上に取材も重ねて、丁寧に発表されていた作者とは違って。。。

こんなバックヤードも何も無い素人なのに、ネットで検索すらしていない。。。

単に、センセーショナルなキャッチコピーとタイトルだけの薄っぺらい内容で、売り上げだけは上がっている。。。

高校の学芸会レベルの「握手券付きのCD」だけが売り上げを伸ばしている音楽業界もそうだけど、なんだか日本人のレベルがどんどん低くなっているようで、同じ日本人として情けないし、日本人のイメージを上げてきた先人に申し訳ない気持ちになりますw

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