これまでも本ブログでは、ART「antiretroviral therapy(抗レトロウイルス療法)」について、その開始時期について、私なりにまとめてきたつもりですが。。。
きちんと整理をしていなかったので、改めて、「抗HIVガイドライン(2015年3月)」を参考にまとめておこうかなと思います。
なお、A(強く推奨)、B(中程度の推奨)、C(任意)という評価になっていて、1>2>3(専門家の見解)の順に評価が高くなっています。例えば「A-1」が最も高い評価ということになります。
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最初に、「抗HIVガイドライン(2015年3月)」でまとめられている開始基準を簡単に整理しておきます。
◆AIDS(エイズ)を発症していない場合*1*2
- CD4が500超【B-3】*3
- CD4が350超500以下【A/B-2】
- CD4が350以下【A-1】
- 妊婦【A-1】
- HIV関連腎症【A-2】
- B型肝炎の治療を開始【A-3】
- C型肝炎の合併【C-3】
- 心血管疾患のリスクが高い【B-3】
*1:治療開始にあたっては、服薬アドヒアランスの確保が重要である
*2:感染早期でCD4の回復が期待できる場合は、経過観察してもよい
*3:一部の医療費助成制度を利用できない可能性があるので留意する
◆AIDS(エイズ)を発症している場合*4*5
- CD4に関わらず【A-1】
*4:エイズ指標疾患が重篤な場合は、その治療を優先する必要のある場合がある
*5:免疫再構築症候群が危惧される場合は、エイズ指標疾患の治療を先行させる
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上記のように、最も強く推奨(A-1)。。。
ほぼ強制的に服薬が開始されるのは、「CD4が350以下」「妊婦」「エイズを発症」という3つのパタンとされています。
また、個人的には「CD4が500超」の場合の説明の中にある「一部の医療費助成制度を利用できない可能性がある」という但し書きが最も気になります。
このガイドラインには、どうしてこういった評価になっているのか、データをもとに簡潔に整理されているので、興味がある方は一読されるといいと思います。
ただ、これらの内容は、感染者本人の健康状態に重点を置かれ、公的な制度も同様となっています。
特に、身体障害者手帳の制度などは、「一度重くなったら改善されることはほとんどない」という観点で整備されていることが、気になります。
というのも、HIVの治療については、服薬することで状態が劇的に改善し、状態が悪化するのは「服薬が失敗した場合のみ」だからです。
そのため、HIVの治療現場では、HIV感染というだけでは、実質的に治療を進められず、ある程度状態が悪化するまで「様子見」をしているのが現状です。
一方で、HIV感染者は増え続けているということが、懸念されています。
何度も繰り返していますが、他人に感染させる可能性を低くするためには、感染したばかりで服薬していない人(感染していることを知らない人を含む)への対策が急務だと思うのに、制度がそうなっていないんですよね^^;
もちろんHIV感染という病気だけを、問題視するのはどうかとも思いますが。。。
もう少し、本人の健康のほかに、「感染拡大を防止する」という観点から、制度を再検討すべきじゃないかと思います。
具体的には、HIV感染している人は、全員、服薬を開始しやすくするように、すべきではないでしょうか?
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