【テーマ】
「HAND*」
【要旨】
- HIV感染者の治療の長期化と高齢化に伴い問題となってきているHANDについて考える
【メモ】
<認知機能障害の診断とトピックス>
- 認知機能障害の人は約500万人いると推計されている(65歳以上の30%前後、65歳未満の若年性の認知症は5万人程度)
- 認知症の兆しの10パタン
- 今何をしようとしていたか簡単に思い出せない
- 同じことを何度も言ったり尋ねたりする
- 人と会う約束を忘れたことがある
- 探しものが増えている
- 何かやろうとしても「まあいいか」と思ってしまう
- 長年の趣味を楽しめなくなってきた
- 外出することが減った
- 段取りが下手になった
- レジで会計する時に小銭が使えない
- 今日の日付が言えない
- 生活に支障があるのか?、何に困っているのか?(本人は気付いていないことが多い)、その程度や度合い、基礎疾患はあるのか?といったことが診察に重要
- 急に悪化するというよりも、少しづつ悪くなるので、定期的な受診や健康時との比較が重要になってくる
- 簡単なテスト(アルツハイマー等)
- さくら、ねこ、電車という3つの簡単な単語を覚えてもらう
- 「100-7」→「93-7」の計算
- 「6-8-2」と「3-5-2-9」を逆に言ってもらう
- さっき覚えてもらった3つの単語を質問する
- 「いつ」からなのか?、(おかしいと思った)エピソード、今の記憶か昔の記憶か両方か?、妄想や行動異常の有無、家事(炊事、買い物、洗濯など)は出来るか?、テレビ番組(特に朝ドラや相撲など)を面白くないと言い出した(忘れて分からないのかも?)といった情報も大切
- 認知症は「初期」に見分けることは難しい(ウツなどの精神疾患を合併することも多い)
- 「脳波検査」では周波数の遅いことが特徴だとされている(ヘルペス脳炎、HAND、クロイツフェルトヤコブ病など)
- CD4が200未満だとHANDである可能性が高くなると言われている
- これまでと「違う」かどうかがポイントである
- 「注意力」が欠けてくることも多い(周囲の人には耳が遠い難聴のように見られることもある)
- 図形をうまく書けなくなる傾向もある(特に「立方体」)
<HIV感染からくる認知機能障害(HAND)と認知症~感染者の高齢化を迎えて~>
- 感染者の高齢化が進むとともに、認知障害が目立ってきている(何らかの認知機能の障害がある人は51%いると言われている)
- 認知症は、大きく2つに分類される
- アルツハイマー型:そもそも情報が入ってこない、ヒント出しても思い出せない
- パーキンソン型:情報が入るが思い出せない、ヒント出せば思い出せる、HANDもこちらだと言われている
- ただ、明確に分けられない事例も多い
- HIV感染によって、認知機能が低下し日常生活での機能低下や身体的な健康問題も起こる(日によって状況が違う)が、加齢によってそれが加速されると考えられている
- 薬物使用、けんか、事故、精神疾患(ウツなど)につながることも目立つ
- HIV感染者の場合は、早めに症状が出やすいので、50歳くらいから注意した方が良いかもしれない
- 「脳トレ(認知症のリハビリ)」も有効かもしれない
- 医療チームでのケア(サポート)が大切である
- HIV感染者は同系統のパーキンソン病にもなりやすいと言われている
<HIV関連神経認知障害に関する疫学研究の動向とJ-HAND研究の進捗状況>
- 何らかの認知機能の低下は感染者の約47%(国や調査によっては、6.8~53.2%、21~59%)に見られる
- リスク要因としては、年齢、CD4、ウイルスの数、投薬期間や感染時期などが考えられる
- HANDの割合は、概ね25%くらいではないかと推測される
<HIV感染症患者の認知機能低下と疾患別の特徴>
- うつ病、集中力や注意力の衰えが目立つ
- HANDかどうかの見分け方は難しい
【感想】
- 認知症は、本人に恥ずかしい気持ちがあるので、軽い場合はうまく誤魔化すことも多いと聞いたことがあります。
- 本人が気付きにくいことでもあるので、周囲の人が細かいところに注意してあげることも重要なんだろうと思いました。
- HANDというと何か得体の知れない恐ろしい病気のように感じますが、簡単に言えば「普通の人よりも老化が早まる」と言えそうです。
- HANDなのかどうかという判別は簡単ではなく、HIV感染者は健常者と比較して老化が早いため、認知症にも早いうちから罹りやすいと考えられるのかもしれません。
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*補足
- HANDとは:HIV Associated Neurocognitive Disorderの略、HIV関連の神経認知疾患のこと
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※この記事は、「第29回日本エイズ学会学術集会・総会 HIV陽性者参加支援スカラシップ 報告書」(発行:HIV陽性者参加支援スカラシップ委員会)のために私自身が作成したメモをもとに、ブログ用に内容を修正加筆したものです。
※※私自身が補足した内容も含まれるため、実際には発表されていない文言もあります。
※※※なお、レポート化しなかった他の8つのテーマに関するメモは、SNS限定で公開しています。
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