サルベージ治療の傾向と対策~服薬を失敗しないために~

8/8に服薬がスタートして、10日が過ぎました。

その前から約1ヶ月ほどビタミン剤などで服薬を練習していましたが、自分では大丈夫と思っていても、意外と思い通りに行かないケースもあると感じています。

どういった場合に失敗しやすいか知っておくと、いざそういうケースになった時に素早く対処しやすくなると思います。

今回は、服薬失敗の原因と対処法について、ACCの資料「診断と治療ハンドブック」をもとに整理したいと思います。

治療失敗の原因は必ずしも薬剤耐性とは限らない。服薬アドヒアランス*が不良な状況で治療薬を変更しても、再び治療失敗に終わる可能性が高い。失敗の原因を明らかにし、是正可能なものは是正した上で、必要があれば最適な治療薬の組み合わせに変更する。

2006年以降、複数の新規薬剤の登場により、薬剤耐性ウイルスに対してもサルベージ療法**を組み立てることは以前より容易となったが、いずれの薬剤も単剤で長期間良好な抗ウイルス作用を維持することは難しい。治療変更にあたっては、有効と考えられる薬剤を少なくとも2種類、可能なら3種類以上同時に開始することが重要である。

なお、薬剤耐性検査のうち通常行われる検査では、過去に投与された(検査時点で投与されていない)薬剤に対する耐性ウイルスを検出できない場合がある。薬剤耐性検査の結果に加え、過去の治療(失敗)歴を詳細に分析することが必要である。

ACCでは、具体的に6つの原因と対処法をあげています。

【1】耐性HIVの出現

・薬剤耐性検査
・治療薬変更
・薬剤変更前に服薬アドヒアランス*を確認

【2】服薬アドヒアランス*不良

・再教育
・(場合によっては)DOT***目的の入院も考慮
・以下のその他原因についても確認

【3】生活環境の変化(転職、失職、転居、離別など)

・生活パタンの確認
・必要に応じて、服薬時間や治療薬を変更

【4】金銭面の問題

・家族の支援体制の確認
・社会保障制度の確認

【5】家族への未告知

・告知の意義について話し合う

【6】吸収不良

・薬剤血中濃度の測定
・内服状況の確認(食後内服が条件となっている薬剤など)
・併用薬の確認(他院の処方薬、漢方薬や健康食品など)

それぞれ簡単に補足してみましょう。

1)耐性HIVの出現

・自分自身の服薬忘れのほか、そもそも感染したHIVに耐性があった場合も考えられます。
・治療対象者が「服薬」をきちんと実行することが何よりも重要です。
・結果として耐性HIVが出現したら。。。担当医や薬剤師などの専門家と一緒に対処していくしかないですよね。

2)服薬アドヒアランス*不良

・HIV感染は、周り(世間)だけでなく自分自身の中にも「偏見」があって、病気そのものに集中できないことがあります。精神的な混乱が主な原因だと思うけど。。。担当医や看護師などの医療スタッフに相談したり、他の陽性者の意見を参考にしたり、もちろん本ブログなども活用して、自分なりに「納得すること」が大切です。
・いきなり服薬を始めようとしても、気持ちが追いつかない(混乱する)ことがあります。そうならないために、投薬開始の1ヶ月くらい前からビタミン剤などで練習しておくと、いざ服薬開始となっても戸惑わないのでオススメです。

3)生活環境の変化

・生活の中でも「仕事」の占める割合が大きいかもしれませんね。
・何か服薬するに当たって「支障」があるのであれば、早めに(できれば練習段階で)対処するようにしましょう。
・自分で対処しきれないような問題が起こった場合は、担当医や薬剤師などの医療スタッフに率直に相談してみましょう。

4)金銭面の問題

・こちらも「仕事」との関係が大きいかもしれませんね。
・幸いHIV治療には、充実した社会保障制度を使える環境が整っています。少々難しいところもあるのですが、分からないことがあれば医療ソーシャルワーカーや看護師などの医療スタッフに率直に相談してみましょう。

5)家族への未告知

・こちらは、自分自身にとっても「難題」です。
・告知できるような環境なのであれば、告知した方がラクかもしれませんが。。。できるだけ自分だけで対処したいと考えているHIV感染者も少なくないと思います。
・とはいえ、ある程度重症化したら(入院するような場合)家族への告知は必須なのかもしれません。
・少し心配なのは、ボケてしまったようなケースですが。。。これはもう仕方ないケースなのかもしれませんよね^^;

6)吸収不良

・薬同士の飲み合わせのほか、ビタミン剤などの健康食品と相性が悪いことがあります。
・できればHIV治療薬のみ服薬することが望ましいところですが。。。それが無理なのであれば、必ず事前に担当医や薬剤師などの医療スタッフに相談してみましょう。

最後に、文中にある難しい医療用語について解説しておきます。

*アドヒアランス:治療対象者(HIV感染者及びAIDS患者)が積極的に治療方針に参加し、自らの意思に従って治療を実行(内服)し、それを続けていく姿勢を表した用語です。

**サルベージ療法:ある薬剤を使った治療に効果がなかった場合に、その次に使用される治療のことです。サルベージとは「遭難した船の人命・船体・積み荷などを救助すること。」といった意味があります。

***DOT:Directly Observed Therapy(直接観察療法)の略。医療チームの世話人が薬を飲むのを直接観察することです。

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