初めてのART~ARTのルール~

先日、ART「antiretroviral therapy(抗レトロウイルス療法)」について簡単にふれましたが、今回はもう少し詳細にまとめてみようと思います。

インターネット上には、もちろんARTについて説明してくれているサイトもありますが、専門家のためのサイトが多いせいか英字やカタカナが多く、辞書(別のサイト)を片手に翻訳していかないと解読できない暗号のような解説が多いようですw

HIV治療薬」で取り上げたように、日本での承認薬は海外のものがほとんどということも理由のひとつかもしれませんね。

これまでも参照してきたHIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班の「抗HIV治療ガイドライン」及びACCによる「ACC患者ノート2014年版」と「診断と治療ハンドブック」をもとに、できるだけ簡単にわかりやすく整理してみましょう^^

HIV治療薬」で取り上げたように、日本での承認薬は数多いのですが。。。

もちろん全ての治療薬を飲むわけでもないし、これらの中から相性が良くて違う種類の組み合わせの薬を使って治療(服薬)を進めていくことになります。

なんとなく。。。

「できるだけ多くの薬を飲んだ方がいいのでは?」

という素朴な疑問がわいてくるのですが。。。これは「投薬のリスク」でまとめたように、万一飲み忘れなどによって薬剤耐性が発生したり、もともと薬剤耐性のHIV(ウイルス)に感染していたりした場合に、別の薬で対処できるような「選択肢」を残すことと、数をいたずらに多くしても効果(HIVというウイルスの活動を抑えこむこと)は大差ない上に副作用のリスクが増大してしまうため、できるだけ少ない薬で「効率的な治療」を心がけていることが理由と考えられます。

ACCなどでは、これまでの副作用の報告、薬の飲みやすさ、海外(アメリカ)での評価などをもとに、初回治療として推奨される組み合わせを、具体的にまとめています。

※以下のキードラッグとバックボーンから1つづつ選択します。

◆キードラッグ

・EFV(ストックリン)A-1

・DRV+RTV(プリジスタ+ノービア)A-1

・RAL(アイセントレス)A-1

・ATV+RTV(レイアタッツ+ノービア)B-1

・DTG(テビケイ)B-1

・STB*(スタリビルド)B-1

・LPV/RTV**(カレトラ)

◆バックボーン

・TDF/FTC(ツルバダ)A-1

・ABC/3TC(エプジコム)B-1

・STB*(スタリビルド)B-1

・AZT/3TC**(コンビビル)

*STB(スタリビルド)の場合は、STBだけでOK(配合されているため)
**妊婦の場合は、LPV/RTV(カレトラ)とAZT/3TC(コンビビル)の組み合わせを推奨A-1
***代替治療薬としてLPV/RTV(カレトラ)B-1、FPV+RTV(レクシヴァ+ノービア)B-1、RPV(エジュラント)B-1、が準推奨されています。
****DRV+RTV(プリジスタ+ノービア)とABC/3TC(エプジコム)、RAL(アイセントレス)とABC/3TC(エプジコム)の組み合わせは十分なデータがないという理由でB-3とされています。

テビケイ、スタリビルドの場合は、まだ新しくてデータが少ないため若干厳しい評価B-1となっているようですね。

レイアタッツ+ノービアは、副作用の問題などから、あえて評価を下げられたみたいです^^;

エプジコムは、海外において過敏症といった副作用が問題視されて推奨から外れていたこともあるようですが、日本では日本人には明確な差異が認められないという理由から推奨され続けているという経緯があるとのことです。

これらの推奨や承認については、今後、評価が変わる可能性があるので、毎年更新状況を注目していた方が良さそうですね。

以上のことから、妊婦を除くと、キードラッグから5種類、バックボーンから2種類(ツルバダorエプジコム)選ぶか、もしくはスタリビルドを選ぶことになるので。。。

「5×2+1=11通り」の組み合わせが推奨されるのですが、データ不足のためB-3とされている2つの組み合わせを除外すると「9通り」の組み合わせが推奨の組み合わせとなります。

さらに服薬回数が1日2回になってしまう「アイセントレス」を外して。。。

あえて食直後という条件がある「レイアタッツ+ノービア」「プリジスタ+ノービア」「スタリビルド」も除外すると。。。

キードラッグで残っているのは「ストックリン」もしくは「テビケイ」の2種類となり、バックボーンから2種類(ツルバダorエプジコム)を選ぶ「2×2=4通り」の組み合わせが残ります。

これまでのデータを重視すれば。。。

「ストックリン+ツルバダ」

あえて新しい薬「テビケイ」を選ぶのであれば。。。

「テビケイ+ツルバダ」

同じヴィーブヘルスケアという会社が取り扱っていて、1つの錠剤になることが予想されている。。。

「テビケイ+エプジコム」

あたりが、より推奨される組み合わせと言えるかもしれません。

もちろんこれらの組み合わせは、各人の状況によって選択は変わるものであって、全員に対して同様に当てはまることではないので注意してください!

ただ、「何でその組み合わせなのか?」担当医や薬剤師に確認して、服薬する本人が納得した上で、治療を進めていくことが大切になってくるのは言うまでもないことですよね。

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